救援新聞・福岡県版  2010年9月5日号

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★  目次  ★
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福岡県本部 第44回大会議案

 日本国民救援会福岡県本部第44回大会の招集について
 はじめに
 T 運動の総括と教訓
 U 2010年度の運動方針
 第44回県本部大会スローガン


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■日本国民救援会福岡県本部第44回大会の招集について

  会員ならびに加盟団体の皆さん、日本国民救援会福岡県本部第44回大会を下記の通り開催します。
 この1年間、福岡高裁ではたくさんの事件がたたかいました。事件関係者が、声掛け合い、励ましあってたたいました。 そのなかで生存権裁判では画期的な勝利を勝ち取り、憲法違反の悪政を断罪しました。
 来年は、福岡市長選、北九州市長選、いっせい地方選挙と選挙の年になります。 それだけに国公法弾圧2事件の支援運動を広げ、ビラ配布の自由、選挙・政治活動の自由の権利をまもるために奮闘しなければなりません。
 個人の尊重・幸福追求権(憲法13条)、生存権(同25条)、勤労の権利(同27条)を奪われた非正規労働者や国民が人間の尊厳を守るために立ち上がっています。 そのたたかいを支援する国民救援会の果たす役割はおおきなものがあります。 皆さんの力をお貸しください。 
 力を合わせ、救援運動をさらに前進・発展させるために、県本部大会で大いに議論をたたかわせたいとおもいます。
 多数の皆さんの参加を心からお願いいたします。 会員及び団体会員はどなたでも参加できます。事件関係者も積極的に参加ください。

日 時 2010年9月26日(日) 10:30〜16:00
場 所 福岡市早良区市民センター  第一会議室
     福岡市早良区百道2−2−1 
     電話 092−831−2321


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はじめに

 今年2010年は、憲法施行65周年、レッド・パージ60周年、安保条約「改定」50周年の年に当たります。 この時期、国民は昨年8月の総選挙で戦後60年に及んだ自民党中心の政治に厳しい審判を下し、民主党中心の政権を選択しました。 さらに、今年7月、制憲についた民主党が、普天間基地問題や高齢者医療制度などの公約を裏切ると、参議院選挙で厳しい審判を下しました。
 これらの動きは、戦後続いてきた安保体制による「アメリカ従属、財界優先」の政治の行き詰まりによる、失業と貧困、格差の拡大、医療・社会保障の切捨てなどで人間の尊厳までも奪われる深刻な事態に国民は、「国民が主人公の新しい社会に向かい、歴史的な転換期に踏み出しはじめている」(第55回全国大会)ことを示しています。
 この間、国民救援会は、「アメリカ従属、財界優先」の政治・社会を支える司法・裁判所に対して、司法の独立と事実と道理、憲法にもとづく裁判を求めて国民とともにたたかってきました。 この運動は、冤罪事件の社会的批判などと連動して、国公法弾圧堀越事件控訴判決や北九州・生存権裁判控訴判決などにみられる「市民にわかりやすい判決」への変化の兆しをつくりだしています。
 このような情勢の中で開かれた第55回全国大会は、「国民救援会が活動の羅針盤としてきた日本国憲法と世界人権宣言(国際人権規約)にもとづくたたかいが、いま輝きを放っています。」と指摘しています。 ここに確信と展望をもってさらに救援運動を発展させましょう。 第44回県本部大会は、
 (1) この1年間の運動を総括し、
 (2) その教訓と第55回全国大会の決定に基づく方針と予算を決定し
 (3) 決定した方針を推進する県本部役員を選出します。


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T 運動の総括と教訓

1 憲法と民主主義をまもる運動
(1) 憲法を読み、学び、身につけ、たたかおう

 参議院選挙で敗北した民主党・菅内閣は、普天間基地撤去問題や消費税問題さらには国会議員削減、国会「改革」などで「アメリカ従属、財界優先」の政治を強行しようとしており国民との矛盾はいっそう鋭く、深まろうとしています。
 昨年の第43回大会は、「憲法をよく読み、学び、身につけ、事あるごとにこれを引用し、憲法を武器に確実で、かつ安全な道」(内藤功顧問)に確信をもち、あわせて世界人権宣言なども読み、学び、身につけることを呼びかけました。
 各地で憲法集会や9条の会の集会などに参加してきました。 北九州総支部は憲法集会で事件の署名を集めました。

(2) 労働者・国民の生活と権利をまもる運動
 厚労省によると、年収200万円以下のワーキングプアは6年連続1000万人を超え、09年度で生活保護基準以下の世帯が705万世帯、自殺者は32,845人で12年連続3万人を超え、原因別の前年度比では生活苦が43,3%増、失業が65,3%増、人がモノとして扱われる派遣などの非正規労働者の実態はなんら改善されず、その結果、内需は落ち込み、不況による中小業者の倒産も後を絶ちません。
 3月21日の県民集会などに参加してきました。
 北九州・生存権裁判の原告、Iさん(89歳)は5月10日の意見陳述で、「憲法には、私たちが生きていけるという権利が書かれているのに、その権利が守られていないということは、憲法は、神様や仏様と同じで存在しないものなんだと思うようになりました 。憲法が神様や仏様と同じではなく、私たちの生活を守ってれるものにしてください。 国を動かす力は、裁判長にあるのです。 私は大勢の仲間に助けられながら裁判に勝つまでこれからも頑張ります。」と裁判官に訴えました。
 国民救援会は、諸事件の裁判で、「憲法が私たちの生活を守ってくれるものにする」判決を求め運動しています。 いずれの事件も、憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)、25条(生存権、国の社会保障義務)、27条(勤労の権利及び義務)などを侵害され、その回復をもとめています。
 国家的不当労働行為と23年間たたかったJR採用差別事件が政治解決しましたが社会保険庁の民営化で再び国家的不当労働行為による採用差別解雇事件がおこされました。 「社保庁不当解雇撤回全厚生闘争団を支える会」が結成され、全国的なたたかいがはじまっています。 入会を呼びかけます。
 1949年に松川事件がデッチあげられ公務員のレッド・パージ(定員法)が強行され、翌50年には民間企業でレッド・パージが強行されました。 それから60年、松川事件を風化させずレッド・パージ被害者の権利と名誉を回復させる運動を引き継ぐために、福岡市(12月4日、1000人)と北九州市(1月24日、140人)で映画「松川事件」の上映会をおこないました。
 レッド・パージから60年、改めてレパの事実と今日の情勢とのかかわりなど学習するとともに、名誉と権利の回復と国家賠償をもとめる被害者の運動に積極的に参加していきます。

(3) 国民監視と自由抑圧に反対する運動
A  いろんなところに「テロ対策実施中」の立て札がたち、不審者、不審物を通報するようによびかけています。 警察庁は通学路の「安心・安全」と称して、そのモデル地域の全校生徒100人もいない大名校区を指定し、校区に25台の監視カメラを設置しました。 県本部事務所の筋向いの交差点にも設置されています。
 県弁護士会は、「警察等による市民監視や不透明な個人情報の収集・利用は個人のプライバシー権を侵害するばかりか、民主主義社会を支える言論・表現の自由を委縮させる危険がある」「犯罪防止のための監視が一定の場合に許されるとしても、具体的にその場所で起こり得る犯罪の軽量や蓋然性を度外視し、抽象的な『安全』や、単なる主観にすぎない『安心感』のために人権を制約することまで許されているのではない」(09.7.31)と反対しています。
 ICカードや携帯電話の個人情報は、捜査当局の照会で本人に無断で提供される危険があります。 一方、公共の工作物にもかかわらず民主主義社会の基礎である選挙用ポスターの掲示を拒否し、警察に取締りを要請する企業があります。
 悪政が生み出した社会不安を利用して、「人類の多年にわたる自由獲得の努力」(憲法97条)で得られた自由を抑圧する動きに反対する世論を広げよう。

B  自衛隊情報保全部隊の違法なスパイ活動を告発する裁判、「自衛隊の国民監視差止訴訟」が仙台地裁でたたかわれています。戦時中の憲兵隊の復活を許してはなりません。署名などで事件を知らせ支援に取組みます。

(4) 言論・表現の自由、政治・選挙活動の自由を守る運動
 「自分と異なる価値を認めようとしない偏狭な風潮は国、自治体、社会の中に澱み、時々にその様相を変えながら浮上する。 社会が多様な意見を尊重する寛容さを失えば民主主義はその成長を止める。」(S会長・憲法運動7月号)

A  葛飾ビラ配布弾圧事件 最高裁で有罪(09年11月30日)
 04年12月、出入り自由なマンションの各戸ドアポストへのビラ配布が弾圧され、06年8月地裁で無罪、07年12月高裁で逆転有罪 。08年1月大石市議選挙弾圧事件が最高裁で有罪確定。 09年5月には荒川庸生さんが来福され福岡市内と北九州市内の労組、民主団体をオルグされました。 09年2月、4月、9月、10月の4回最高裁要請行動に参加しました。 県内から最高裁へ送った団体署名は150枚を超えました。

B  09年5月に熊本県で2件のポスターはり弾圧事件が発生、参議院選挙投票日直前の10年7月9日、神戸市西区で、政党ポスターを信号柱などに仮止めしたことで公選法145条1項違反弾圧事件発生 。いずれも不起訴要請の団体署名に取り組みました。 熊本は09年12月不起訴、神戸は7月29日不起訴決定。 神戸の弾圧事件では100団体を超える署名を送りました。
 ポスター張りが屋外広告物条例違反や軽犯罪法違反でなく公選法違反で弾圧されたのは初めてです 当事者は完全黙秘でたたかいました。 尾行・張り込んで逮捕した警察、家宅捜査や2度の拘留延長を求めた検察、それを認めた裁判所の態度は、憲法と国連の自由権規約に反するもので許されるものではありません。
 7月の参議院選挙で証紙を貼った政党ポスターの電柱取り付けに警察や選管から撤去勧告がなされ仕方なく撤去した地域があります。 また、選管が勝手に撤去・保管した後に連絡してきたところもあります。

C  国公法弾圧堀越事件の控訴審・違憲無罪判決は付言で、「我が国における国家公務員に対する政治的行為の禁止は、諸外国、とりわけ西欧先進国に比べ、非常に広範なものとなっていることは否定しがたい」としたうえ、規制は「過度に広範に過ぎる」と述べ、様々な分野でグローバル化が進むなかで「世界基準」という視点から改めてこの問題をとらえるべきだとしています。 一方、世田谷国公法弾圧事件の控訴審判決は、35年前の猿払事件最高裁判決(74年11月)にしがみついた時代錯誤の有罪判決です。(S会長・前同)

2  国際人権条約を学び、活かそう
民主党は総選挙のマニュフェストに、「人権条約選択議定書を批准する」と公約しました。
県本部は12月17日に民主党県連本部を通じて鳩山総理大臣あてに「自由権規約」「個人通報制」(第一選択議定書)の批准をもとめる要請書を提出しました。
 若松支部は、5月29日に創立25周年記念に鈴木亜英会長をむかえ「言論表現、政治活動の自由と国際人権規約」の講演会をひらき41名が参加しました。
 第一選択議定書が批准されると、国内の手続きで人権侵害が回復しなかった場合に、自由権規約委員会に直接通報し、審査を受けることができます。
 「しかし、これまでの日本政府の国際人権無視の姿勢は頑固である。 日本が1979年自由権規約を批准したあと、個人通報を可能にする第一選択議定書の批准を今日まで30年余りに亘ってさぼり続けてきた。 風通しの悪い人権半鎖国状態が続き、わが国は国際性を失った『人権ガラパゴス』となりつつある。 個人通報性度の則時実現と国内裁判所での国際人権規約の旺盛な活用が求められている。」(S・前同)救援運動で活用できるよう学習をすすめましょう。

3  民主的な司法をめざす運動
(1) 裁判員裁判のとりくみ

 裁判員裁判がはじまって1年が経過しました。 7月末までに終了した裁判員裁判は全国で858件(福岡県27件)、被告人904人(福岡県33人)。 無罪は1件。 裁判員5200人、補充裁判員役1900人が参加。
 4月27日、布川事件の桜井昌司さんをむかえて、第3回裁判員裁判市民講座をひらきました。北九州でも学習会をひらきました。
 「自白」偏重の捜査と裁判に批判がたかまっています。 12月17日、民主党県連に、「取り調べの全面可視化」の実現をもとめる要請をおこないました。
 この間、犯罪被害者の裁判参加、公訴時効の廃止、裁判員裁判のもとでの死刑制度の問題など刑事裁判をめぐる様々な問題があります。
 全県的な学習会はひらけませんでした。 ひきつづき、傍聴や学習を通じて、刑事裁判の鉄則と裁判員の役割などへの理解を深め、運動をすすめます。

4  諸事件の勝利をめざす運動
(1) 高裁でたたかう事件
 前大会議案では高裁でたたかう事件が7事件でしたが、その後、4事件が増えて、この1年間に高裁でたたかった事件は11事件でした。 このうち北九州関係の事件が6事件ありました。
 地裁でたたかう事件もふくめて、週に1、2度は福岡高裁門前で、裁判前後の報告集会がひらかれる状況でした。 1日に2件、3件の日もありました。
 近年になく沢山の事件がたたかわれるなかで、県本部は救援新聞県版で裁判の日程を知らせ、「声かけあって、励ましあってたたかおう!」と、傍聴などの共同を呼びかけました。
 会員の傍聴が増える一方で、北九州の定温輸送分会の裁判に久留米の押し紙裁判の関係者が傍聴するなど事件関係者がお互いに傍聴や集会に参加する動きは広まりました。
 昨年は、生存権裁判と九州定温輸送分会解雇事件の地裁判決を前に、全国の国民救援会の支部の署名を要請しました。 今年は、6月に自由ヶ丘高校M先生解雇事件、春日病院Tさん解雇事件、九州定温輸送分会解雇事件、爪ケア事件について国民救援会都道府県本部と全支部に要請しました。

(2) 要請で来福された事件関係者
・4月26日、27日 布川事件桜井昌司さん 福岡市内の団体オルグと学習会 

(3) 現地調査や集会等への参加、派遣
・松川事件60周年集会 福島市 10月17日、18日2名
・葛飾ビラ配布弾圧事件 最高裁要請 9月28日、19月19日各1名
・大崎事件現地調査 11月7日、8日(北九州)3人
・裁判勝利をめざす全国交流集会 熱海市  4月11日、12日
  TNC正社員化裁判Mさん、まどかぴあ雇い止め裁判原告Iさんの2名参加

(4) 年末統一救援募金
裁判勝利と救援運動の前進をめざす年末統一救援募金は、たくさんの協力がありました。多くの人に救援運動を語り、心温まる募金の協力を訴えましょう。

(5) 名張事件・布川事件の全国ビラ配布宣伝行動
 11月の名張事件・布川事件の全国ビラ配布宣伝行動は11月17日に福岡支部が天神でおこないました。 北九州総支部は各団体に配布しました。

・5・20無実の人々を救う全国宣伝行動、5月20日海老津駅前6人で500枚、5月27日天神パルコ前7人で300枚、6月20日リバーウォーク6人で300枚、いま冤罪事件への関心が高まっています。街頭での宣伝を強めましょう。

(6)事件の勝利めざして  県内各事件の現状(順不同)
▽終結した事件

A  県同教ヤミ専従糾明裁判  6月1日 最高裁 勝利確定
 県立高校の教諭が、授業をすることなく民間団体の全国同和教育研修協議会の運営に関わっていた分の公金(給与約9百万円、出張旅費)返還を求めていた裁判。 高裁の県知事に、同教諭らに331万円の請求を命じる判決が確定。

B  読売新聞押し紙訴訟・S裁判  7月13日 最高裁 敗訴確定
 塩川茂男さんは、YC小笹店の経営を引き受ける時、読売と1000部の押し紙を切る約束をしたが、読売が約束を果たさず、廃業に追い込まれたので読売に損害賠償を請求した。 1月26最高裁敗訴

C  春日病院・Tさん不当解雇事件 7月5日 福岡高裁 敗訴決定
07年8月、病院にTさんを誹謗・中傷する匿名の手紙が届くと、病院は5年前にTさんが患者を虐待したと解雇。 虐待の証拠は何一つなく、職員の「虐待を見た」とする証言だけ。 裁判所がデッチあげ解雇を認める不当判決。

D  大牟田・S裁判
 公害病認定患者のSさんの死亡により、遺族が請求した遺族補償費等を市が却下決定。 その取消しを求めたが、死因が公害指定疾病(気管支喘息の続発症)かそれ以外かをめぐって争われたが、死因は特定できないとされた。

E  片江保育園不当解雇事件
 正社員として採用された保育士が、告知されることなく有期雇用とされ、期間満了で解雇された。 地裁で勝訴したが09年10月高裁一部敗訴。

F  佐川急便セクハラ・パワハラ損害賠償事件
09年11月、裁判所の斡旋で和解解決

・障がい者自律支援法裁判 国と和解
・B型肝炎九州訴訟  国と和解

▽最高裁でたたかう事件
A  自由ヶ丘高校I先生解雇事件 1月28日 高裁敗訴
07年3月、学園は生活文化科の廃止を理由にI先生を整理解雇。 裁判で学園には莫大な資産があり、解雇の必要性がなかったこと、すなわち整理解雇4用件を満たしていない不当解雇が明らかになったが裁判所は不当判決。

B  大野城まどかぴあ Iさん雇い止め解雇事件  4月23日 高裁敗訴
05年6月、正職員への登用もあるとして採用され、上司もそれを示唆。 その後、「何度も更新できるから契約社員で」といわれたが、08年3月契約期間満了を理由に解雇。 人の心を弄び仕事をさせ、解雇。 これを認める不当判決。 許せない。

C  北九州・生存権裁判  6月14日 高裁勝訴 北九州市が上告
高裁判決は、「生活保護は国の恩恵ではなく法的権利」であり、その権利の不利益変更には正当な理由が必要。 しかし、答申から短期間の老齢加算の廃止決定は、受給者の不利益を検討した形跡もない、として廃止は裁量権を逸脱しており、正当な理由のない保護基準の不利益変更で生活保護法56条違反」と断罪した。 北九州市の70歳以上の39人が原告
北九州生存権裁判を支える会がある。

D  自由ヶ丘高校M先生解雇事件  6月29日  高裁勝訴
I先生の整理解雇に反対して労働組合を結成。 学園の組合員差別、不当労働行為とたたかうなかで、08年3月労組副委員長のM先生を懲戒解雇。 地裁、高裁ともに学園の解雇権乱用を認める。 学園が上告

▽高裁でたたかう事件
A  建交労九州定温輸送分会解雇事件  8月26日高裁判決
 01年3月、劣悪な労働条件の改善をめざして労組結成。 会社の様々な不当労働行為とたたかうなか、05年7月会社は突然会社を解散させ、組合員を解雇。 組合員は、解散させた親会社(ワイケーサービス)に雇用責任を求めて提訴 。09年6月の地裁判決は、解散は組合を潰すためにした不当行為と認め、組合員に慰謝料の支払いを命じたが、雇用責任については認めなかった。
 10年8月26日の高裁判決は、「九州定温の不当労働行為意思の存在が疑われないではない。 しかしながら、前同様、これらが(ワイケーサービス)村上社長の指示に基づくものであると認めるに足りる確たる証拠はないし、仮にそうであったとしても、村上社長も九州定温の管理職であるから、これをもって直ちに第一審被告(ワイケーサービス)の不当労働行為意思の存在を基礎付けるものと断定するのは困難である。」などとして、会社側の主張を鵜呑みにして地裁勝訴分も取り消した。
 村上社長の不当労働行為は、親会社の立場でやったのか子会社の立場でやったのかわからないから、親会社には責任がない、という市民常識から全く離れた判断であり、断じて許されるものではない。

B  爪ケア事件  9月16日高裁判決
 07年6月、「爪はがし」のマスコミ報道のなか逮捕されたU看護師は、「捜査官に爪ケアといっても理解してもらえず、仕方なく調書に署名した」と、「爪はがし」の供述を強要されました。地裁判決は、Uさんの爪切り行為は「一般的には看護及び介護行為」としながら、調書の言葉を拾い取りして「自分の楽しさを求めて」「患者の痛みや出血を避ける配慮を」することなく「ケアを忘れて爪切りに熱中した」ので傷害罪になる、と有罪判決。 行為ではなく動機・こころを有罪とする不当判決。

C  自由ヶ丘高校・県労委命令行政裁判
 学園が不当労働行為を認めた県労委の命令の取消しを請求して提訴。 4月21日地裁で学園の請求棄却。 学園が控訴。

D  自交総連西鉄タクシー労組・賃金請求裁判
タクシー運賃の値上げ時に、労働者の賃上げも条件とされていたが、西鉄タクシーは賃上げにまわさず、有給休暇補償の切り下げなどスライドダウンで労働者に不利益変更を強行している。 この改善をもとめて提訴。 4月16日地裁で敗訴。

▽地裁でたたかう事件
A  TNCに正社員化をもとめるM裁判
 Mさんは、TNC100%子会社・TNCプロジェクトの1年契約の社員で、そこからTNCに派遣されています 。TNCでは、国家資格である第一級無線技術士の資格が必要なテレビ局の心臓部(マスター)で正社員の半分の賃金で10年間働いています。 裁判では、もっぱら派遣、複合業務の派遣などTNCの違法行為を追及し正社員化を求めています。裁判はいよいよ証拠調べに入ります。

B読売新聞押し紙訴訟・M(YC広川店)裁判 地位確認と損害賠償
 02年6月、「広川店の区域分割の申し入れを断ったことに対する意趣返し」(07年6月高裁判決)によって販売店契約更新を一方的に拒絶されMさんは07年12月最高裁で勝利します。 しかし、6カ月後の08年6月、今度は「Mは信用できない」と再び契約更新を拒絶し新聞供給を止めました。

C  読売新聞押し紙訴訟・H(久留米文化センター前店)裁判 地位確認と損害賠償
07年11月、Hさんは仕入れの約50%が「押し紙」となり経営を圧迫していたので、弁護士を通してきりました。 すると、08年3月、新聞社への業務報告に「虚偽」があつた、として、販売契約を破棄し、翌日から新聞の供給を止めました。 押し紙を少なく報告していたことが「虚偽」とされました。 しかし、正直に報告すると「営業努力不足」で契約を破棄されます。 どちらにしても、新聞社が優越的地位にあるので販売店は泣き寝入りさせられます。 二つの販売店には配達員などの社員もいたが解雇を与儀なくされています。

D  読売新聞不当訴訟損害賠償・K氏は、「押し紙」裁判や新聞販売の実態をWEBサイトや週刊誌などに発表しています。 読売新聞社はK氏の記事を「名誉棄損」などで提訴し、高額な賠償を要求しています。 この間、K藪氏が勝訴していますが、K氏は、この提訴がジャーナリスト活動の妨害、言論弾圧として逆に読売新聞に賠償を請求。

E  小倉新栄会病院争議
6月28日、M組合長に対する、懲戒処分の撤回を求めていた裁判で、福岡地裁は処分の違法を認める判決。 Mさんは、これから労働審判に申し立てる。

▽その他でたたかう事件
A  福岡民主商工会会員のDさんは、08年11月に子供部屋、寝室、店舗の引き出しなど人権侵害の不当な税務調査を受けました。 その調査に抗議し謝罪を求めるとともに、その後の調査に立会人を要求したところ、10年3月更生処分を強行してきました。 現在、異議申し立てでたたかっています。 異議が棄却されると国税不服審判所に審査請求します。 また、国賠訴訟も検討されています。 「不当な税務調査とたたかうSさん夫妻を支援する会」が活動しています。

B  明治乳業賃金・昇格差別事件  都労委
1970年代に労組幹部などとして活動してその会社から人権侵害の差別を受け、その撤回を求めて、退職後もたたかっています。 明乳九州本部前や八女工場の前で早期解決をめざして宣伝行動をおこなっています。

(7)無罪をもとめる再審・冤罪事件
A  布川事件や名張事件、福井女子中学生殺人事件、東住吉事件など全国各地にたくさんの無実を求めている事件があります。 集会などで署名を集め送りました。
 大崎事件」の現地調査に北九州から3人が参加しました。 福井女子中学生殺人事件のリーフを取り寄せました。
 各地で無罪を求めてたたかう事件のオルグを受け入れ、現地調査への参加、署名の取り組みなど支援します。

B 8月30日に第二次再審請求などを学習し、支援を強めます。 そのなかで、福岡に「守る会」の結成めざします。

・10月16日(土)、17日(日)に行われる現地調査への参加を呼びかけます。

C 死刑は執行されてから再審開始請求がされている福岡事件と飯塚事件について、研究・検討をおこないます。

5  解放運動無名戦士合葬追悼会の運動
 第63回解放運動無名戦士合葬追悼会には、全国から1029名(累計37415名)、県内から47名(累計1748名)が合葬されました。 式典には、いしずえ会や国民救援会からに付き添いも含めて37名が参列しました。 今年は故人の子どもや孫は参列し「祖父の遺志を引き継ぐ」との言葉も寄せられました。 また、参列者のなかから地域に「いしずえ会」をつくりたい、との声も生まれています。
 推薦が閉め切りの1月に集中し、時間が足りずに遺族との連絡が取れないなどで、推薦されない故人があります。 いつでも推薦は受け付けていますので、日頃から故人の推薦について心がけましょう。
 第22回北九州無名戦士合葬追悼会は09年9月13日に100人を超える人が参列しました。 第5回福岡における解放運動無名戦士追悼会は6月6日におこなわれ57人が参加しました。
 各地で追悼会や懇親会がひらけるよう努力します。

6  組織の拡大・強化をめざす運動
 第43回県本部大会は、新綱領や諸事件の学習会をひらき、救援運動の新たな担い手を育てる努力やすべての支部が体制を確立し、支部大会が開催できるよう援助することなどをすすめ1500人の県本部めざすことを決定しました。
 この1年、福岡高裁、地裁では多くの事件がたたかわれました。 県本部は救援新聞県版で傍聴を呼びかけるとともに、事件関係者の交流・連帯をすすめりために当事者の紹介や行事の周知などおこないました。
 これらの運動で、国民救援会への信頼と期待は高まりましたがそれを会員拡大の取り組みに反映させ、会員の増勢をはかることはできませんでした。 それは、県本部常任委員会での議論が不十分で、会員拡大について独自の追求が弱かったこと、会員の高齢化による退会、死亡者が多かったことなどによります。
 第55回全国大会で3人拡大の大会表彰を受けた会員は、5人です。

7  財政強化の運動
 各支部、団体の会費納入は100%です。その結果、予算内で執行ができました。 詳細は大会で報告します。


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U  2010年度の運動方針
1 憲法と国際人権規約をいかそう

(1) 第55回全国大会決定は、「いま、たたかいによって展望を切り拓ける情勢にありま 
す。人権と民主主義をさら前へ推しすすめるために、国民救援会へのかってない期待をくみ上げ、会員を大いに増やし、「地域の人権と民主主義を守るセンター」となる支部を全国で確立し、救援運動も前進・発展を求めています。「人間の尊厳までも奪われる深刻な事態」から、救援運動・裁判闘争を通して展望が切り拓かれる情勢にあることに確信をもちましょう。 
 民主党政権も、わが国の人権と民主主義侵害の大本である「アメリカ従属、財界優先」の政治には、多くの国民と共同して反対運動をすすめます。

(2) 緊急な課題となっている国会議員定数削減、国会法改悪法は、国民主権、民主主義に反するもので民意をゆがめ、憲法改悪につながるものです。 内容を宣伝し反対の世論を広げます。 戦争のために存在する軍事基地、普天間基地は平和的生存権から撤去をもとめます。

(3) 国連の人権保障は前進しつづけています。 自由権規約、女性差別撤廃条約、拷問禁止条約、人種差別撤廃条約、障害者権利条約には、国内で救済手続きを尽くした上で、なお人権が救済されない場合には、国連に個人で通報し救済を求める個人通報制度があります。 しかし、日本は個人通報制度を批准していません。
 選択制夫婦別性や婚外子相続、死刑廃止など世界では常識になっている人権が日本の世論調査では支持が得られない人権があります。 「世界標準」の人権を学習し、語り、政府に個人通報制度の批准を求めていきましょう。

2  言論表現の自由、選挙政治活動の自由を守ろう。
(1) 最高裁でたたかう国公法弾圧二事件の大法廷回付と無罪判決を求める運動を強めます。 「最高裁でのたたかいは、日本の政治的、社会的民主主義にとって重大な意味を持つたたかいで戦後最大のたたかいのひとつ」(W自由法相団幹事長)「ビラ配りの自由をめぐる攻防は言論表現の自由獲得のための今日的正念場である。 堀越高裁判決の中にあった人権の「世界標準」をわが国に定着させることができなければさまざまの犠牲があったにせよ、この半世紀近くの市民的自由を求める闘いは大局において前進したと評価できよう。」(S会長・前同)

(2) 11月の福岡市長選挙から2月の北九州市長選挙、3月の県議選と福岡市議選、4月の市町村会議員と選挙がつづきます。
 選挙政治活動の権利と弾圧とたたかう心得などを多数ひらきます。特に、出前ミニ学習会に取組みます。

3  司法の民主化と諸事件の勝利をめざす運動
(1) 裁判員裁判のもとでの運動
 裁判員裁判市民講座をひらき、冤罪を生まないための刑事裁判の鉄則の普及と学習をすすめます。 あわせて、傍聴を呼びかけます。
 取調べの全面可視化や検察官手持ち証拠の事前全面開示など冤罪をうむ危険につながる制度の改善をもとめていきます。

(2)  諸事件の勝利をめざす運動
 傍聴は無言の弁護人、署名は無言の傍聴人、という言葉」があります。 救援運動は事件の内容を知ることからはじまります。 各支部で、事件学習に取組み、多くの会員が傍聴や署名などの救援運動に参加できるように努力します。

・県内事件の最高裁でのたたかいへの支援をつよめます。 特に、生存権裁判が勝利することは貧困とのたたかいで大きな意味を持ちます。
・県版で裁判日程等を知らせ、共同の闘いをすすめます。

4 組織・財政の拡大・強化をめざす運動
 第55回全国大会決定は、「国民救援会の発展の方向は、一人ひとりの会員が主人公として、支部を中心とした生き生きと活動できる運動と組織づくりです。」として「全県的に『自律した支部』をつくり、確立して、全会員が活動に参加することの自覚的・継続的な追求が不可欠です。」と指摘しています。

・ビデオなどを活用して事件学習をすすめ、新たな担い手づくりをすすめる。
・支部として登録している地域の体制確立をめざします。
・支部のない地域で、追悼会ビデオの上映会をひらき追悼運動をひろげます。
・第45回大会までに  人の会員を拡大し、  人会員を達成します。
・会員とのつながりを大切にして会費の納入を呼びかけます。
・事件支援募金や年末救援募金を旺盛に取組みます。募金袋による個人募金への協力を積極的に取組みます。


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第44回県本部大会スローガン

1  憲法と国際人権規約を活かし、人権と民主主義をまもり、発展させよう
2  国公法弾圧二事件をはじめすべての事件に勝利しよう
3  1筆の署名、1回の傍聴が真実と正義をまもります
   声掛け合って救援運動に参加 しよう
4  国民救援会の歴史に学び、情勢に応えられる組織都と運動をつくろう


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