2006年4月5日

刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案(未決拘禁法案)に反対し、代用監獄の廃止を求める要請書


 小泉連立内閣は3月13日、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(「未決拘禁法案」)を国会に上程しました。この法案は、昨年5月に成立した、判決が確定して自由刑の執行を受ける受刑者に対する処遇法に、これとはほんらい別立てとするべき未決拘禁者に対する処遇法を加えて一本化するものです。この法案は、衆議院法務委員会で3月31日から審議に入り、与党は十分な審議をしないまま委員会採決しようとしています。
 
 今回の未決拘禁法案は、冤罪の温床として国内外で厳しく批判されてきた代用監獄の恒久化をはかるものであり、また、「無罪推定の原則」の立場で処遇すべき被疑者、被告人の防御権を侵害するものです。さらに、以下のように警察・拘置所などの権限を拡大し、国際的批判が浴びせられていた旧監獄法の規定を、いっそう後退させる条項が含まれており、被拘禁者の人権にとって極めて重大な問題点があります。救援会は未決拘禁法案に反対します。
 以下、未決拘禁法案に対する反対の主な理由を述べます。
1、「各警察署に付属する留置場(旧監獄法1条3項)」を、「都道府県警に設置する」「留置施設」として法制化し、代用監獄の恒久化をはかっている(14条1項)。
  この「留置施設」には、被疑者だけに限らず被告人も拘禁できる規定(15条)を入れたことによって、公判中の被告人までも警察の監視下に置かれることになり、冤罪を訴えることが現在以上に困難になる。
  また、「留置施設」では、現在警察留置場での使用が禁止されている防声具の使用を認めており(213条)、冤罪の温床という性格がさらに強化される恐れがある。
2、「留置施設」や「刑事施設」の規律・秩序の維持、管理運営を理由に、面会や信書の発受など被疑者・被告人の基本的権利に対する安易な制約を認めている。(たとえば、面会の制限を定める118条、220条、268条、信書の発受制限では130条、136条、225条など。)
  弁護人の接見についても、一時停止を認める(219条)など制限規定を設けている。さらに、弁護人以外の面会については、施設職員の立ち会いのほか面会の状況を録画、録音することまで規定している(116条)。
3、死刑確定者の処遇について、旧監獄法は「未決に準じる」(9条)と規定している。しかし、法務省当局は、「昭和38年矯正局長通達」で、死刑確定者の「心情の安定」などを理由に、親族以外の者との面会や信書の発受などを原則的に禁止して現在に至っている。
 今回の未決拘禁法案は、この局長の一片の通達を法律化し、死刑確定者の基本的人権である面会や文書などの発受の権利を、恒常的に禁止あるいは制限しようとしている(32条)。
  
  日本国民救援会は、これまで多くの弾圧事件や冤罪事件の犠牲者救援運動を通じて、代用監獄制度の下での自白強要その他非人道的扱いや死刑囚の処遇などについて批判し改善を求めてきました。また、度重なる警察拘禁2法阻止のたたかいの一翼を担ってきました。
 しかし、100年近くに及んで温存されてきた代用監獄制度の下で、今日に至るまで、警察・検察による自白強要などの人権侵害事件が引き起されています。加えて、その自白調書が証拠として採用されて、無実を訴えながら有罪とされる事件が頻発しています。
 しかもこの未決拘禁法案が、いま継続審議となっており「現代の治安維持法」といわれている「共謀罪」とともに制定されたならば、この国は、再び「警察国家」へと逆戻りしてしまうことも否定できません。
 日本国民救援会は、日本国憲法と国際人権規約の人権保障原則に則った拘禁施設の抜本的な改革と監獄法の改正と代用監獄制度の廃止を強く要請します。
  以上のとおり、今回の未決拘禁法案には、憲法や国際人権規約等に照らしても重大な問題を含まれており、冤罪事件当事者や研究者など広く充分な論議の合意に基づく慎重な審議を尽くすよう重ねて要請します。