「共謀罪」の新設法案の廃案を求める決議

 現在、「共謀罪」を新設する法案(「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」)が、国会で審議されています。
 日本弁護士連合会をはじめ、多くの法律家団体、市民団体が反対の声を上げ、マスコミからも批判の報道が続いています。
 法案によれば、「共謀罪」は、「死刑または無期もしくは4年以上(刑期の上限)の懲役または禁固の刑が定められている罪」に当たる行為で、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行なわれるものの遂行を共謀した者」を罰するとしています。

 この「共謀罪」には、重大な問題点があります。

 第1に、対象となる犯罪や対象となる「組織」が、極めて広範囲・無限定であることです。 対象となる犯罪は、殺人・強盗など重大な犯罪にとどまらず、威力業務妨害、道路交通法違反や消費税法違反など実に600以上にのぼっています。 また、法案で言う「組織」は、暴力団などに限定されず、2人以上の団体・サークルも「組織」とみなされます。

 第2に、捜査権限が大幅に拡大されることです。 犯罪の準備行為がない段階で、いわば話し合っただけでも「共謀罪」が成立するため、室内盗聴など盗聴捜査の拡大やスパイ工作、自白を強要する取り調べが増加する危険があり、また自首した場合は刑が軽減されることから、他人のウソで犯人にされたりする危険もあります。

 第3に、そもそも相談や話し合いを犯罪として捜査・検挙することは、憲法で保障された、思想・信条の自由、言論表現の自由、結社の自由を侵すものです。 市民運動や住民運動、労働組合運動にも適用されれるおそれがあります。

 政府(法務省)は、日本では「共謀罪」を新設しなければならない立法事実(必要性)はないと説明していましたが、批准した国連越境組織犯罪防止条約に「共謀罪」が規定されていることを提案の理由として上げています。 しかし、条約ではマフィアなど@国際的(越境)かつA組織的(職業的)犯罪集団を対象にしており、法案は、それを大きく踏み越えています。
 そもそもこの法案は、国会審議のなかでも、「捜査機関に濫用されるのではないか」などの危険性が指摘され、2回にわたり衆議院で廃案となったものです。 この間、国民救援会も参加して市民と超党派議員の反対運動がとりくまれ、日本ペンクラブが声明を発するなど、各界から反対の声が広がっています。

 日本国民救援会は、「共謀罪」を新設に反対し、廃案をもとめます。

 以上、右決議する。
 2006年2月5日
    日本国民救援会第49回中央委員会