「代用監獄(警察留置場)制度」の廃止と「取調べの可視化」実現を求める要請決議

法務大臣 杉浦正健 殿

 2005年5月18日、監獄法が約100年ぶりに全面改定され、既決者を対象とした「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(「刑事施設・受刑者処遇法」)が制定されました。代用監獄を含む未決拘禁者及び死刑確定者については、改正監獄法(「刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律」)となり、2005年6月から日弁連、法務省、警察庁による「三者協議会」における法改正案の検討がすすめられています。 報道によれば、法務省と警察庁がつくった「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」は、2月2日の第6回会議において提言をまとめました。 この提言では、「今回の未決拘禁者の処遇等に関する法整備に当たっては、代用刑事施設制度を存続させることを前提としつつ」とされ、「代用刑事施設制度は将来的には廃止すべきとする強い意見もあることや、刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えると、今後、刑事司法制度のあり方を検討する際には、取調べを含む捜査のあり方に加え、代用刑事施設のあり方についても、刑事手続き全体との関連の中で、検討を怠ってはならないと考える。」とされました。

 国内外で厳しく批判されている代用監獄(警察留置場)は、本来、逮捕された人を司法当局に引き渡す致すまでの間、一時留め置く場所であって、被疑者を勾留すべき施設ではありません。 しかし、改定監獄法では、「刑事施設ニ代用スルコトヲ得」として従来の代用監獄制度を残し、「警察留置場の管理運営」や「警察留置場における受刑者の処遇」という節が設けられ、代用監獄の恒久化に道をひらく内容となっています。 代用監獄制度は、警察官による「自白」の強要が行われて、多くのえん罪の温床となっており、国連人権委員会をはじめ国際的な人権団体などから「廃止すべきである」と批判を受けている野蛮な恥ずべき制度です。

 2005年9月21日にえん罪布川事件について水戸地裁土浦支部が行った再審開始決定においても、代用監獄における警察官の「自白の強要」の事実が認定され、自白の信用性が否定されました。 被疑者の人権を侵害し、数々のえん罪事件の温床となっている代用監獄の恒久化を断じて許すわけにはいきません。 私たちは、「代用監獄(警察留置場)制度」の廃止を強く求めます。

 また、2005年5月25日に成立した一部改定刑事訴訟法では、かねて各界より強く要請されてきた「取調べ全過程の可視化」が反映されないままでした。 「密室」における取調べは「自白」の強要や誘導を可能にし、えん罪事件の一要因となっており、改善が急務です。 取調べ状況をビデオで録画したり、弁護人を立ち合わせるなどの「取調べ全過程の可視化」の実現を強く求めるものです。

 以上により私たちは、「三者協議会」を経て作成される改称監獄法の改正案作成にあたっては、代用監獄の廃止を求め、あわせて「取調べ全過程の可視化」実現のための刑訴法改正を強く要請します。

以上、決議する。

 2006年2月5日
 日本国民救援会第49回中央委員会