衆議院議長  河野 洋平  様
参議院議長  扇  千景  様
内閣総理大臣  小泉純一郎  様

  心の中を処罰する「共謀罪」に断固反対する

 政府は、前国会で廃案となった、「共謀罪」新設を盛り込んだ組織犯罪処罰法「改正」案を、10月4日今特別国会に再提出した。
 この法案は、「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」として、600を超える罪名を対象に、犯罪を行わなくても2人以上で相談し合意しただけて処罰できる「共謀罪」を盛り込んだもので、内心の自由、思想・良心の自由を侵す、憲法違反の弾圧法となる恐れが大きく、私たちはこれに断固反対するものである。
 政府は本法案の趣旨を、「最近急速に複雑化、深刻化している国際的な組織犯罪に効果的に対処するため、各国が刑事司法制度を整備・強化し、国際協力を推進する」ことを目的に採択された、『国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約』に基づく国内法の整備だと説明するが、本案にある『共謀罪』は、「死刑または無期、長期4年以上の懲役、または禁錮の刑」に該当する犯罪の遂行を「団体の活動として」実行しようと組織的に共謀したものを最高懲役5年の刑に処するもので、共謀は、殺人・強盗だけでなく、威力業務妨害、恐喝、暴行傷害、監禁から、さらには水道法、消費税法、破産法など国際的な組織犯罪とはまったく関係のないものまで含まれ、目的のマフィアや暴力団などの組織犯罪集団の限定がなく、労働組合や市民団体などあらゆる団体が「共謀」の容疑を受けかねない。しかも、自首をすると刑罰が軽減や免除されるといった条項もあり、スパイや密告が奨励され、冤罪を生む危険も極めて大きい。
 そもそも近代刑事法の基本原則は、権力者の恣意的な人権侵害を防止するため、犯罪を犯そうとする意思を処罰するのではなく、実行行為自体を処罰の対象としている。本法案のように、具体的な実行着手に至らない段階で2人以上で合意したことが犯罪とされるのは、この近代刑事法の大原則にもそむいて、まさに人間の心の中を捜査し、思想・信条を処罰することになり、戦前の治安維持法や予防拘禁の復活にも通じるものである。
 しかも、処罰の行為対象のほとんどは言論・表現であるから、国民や団体への監視が強められ、疑わしいものへの盗聴や盗撮が横行し、人権侵害の違法捜査が拡大する恐れがある。
 現在、日本には労働組合や市民団体など多くの団体があり、憲法擁護やイラクへの自衛隊派兵反対、生活や環境などを守るために集会や、街頭宣伝、団交、デモ、座り込み、ストライキ、などさまざまな活動をしている。「共謀罪」を盛り込んだ組織犯罪処罰法「改正」案は、こうした活動が政府・権力に批判的であることをもって処罰対象とする、弾圧を激増させ、暗黒社会招きかねないものである。
 このような、憲法で保障された人権規定を根本から侵し、心のなかを罰する法案は、断じて認められない。廃案を強く要請するものである。

                   2005年10月7日
                   日本国民救援会京都府本部第1回常任委員会


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